日本に生息する害鳥を専門家が紹介!!



近年、日本各地で野生動物との共存が大きな社会的に問題となっています。特に都市部や農村部で「害鳥」と呼ばれる鳥たちによる被害は、深刻な問題となっています。鳥は本来、豊かな生態系を支える大切な存在であり、害鳥と呼ばれる種もまた、自然の中で重要な役割を担っています。しかしながら、人間の生活圏が広がり、鳥たちが本来の生息環境を失い、都市部や農村部で食べ物や住処を探すことで、人間との軋轢が生じているのが現状です。

今回は、野生鳥獣の保護管理に長年携わっている専門家である日本鳥獣対策研究所の協力を得て、日本に生息する代表的な害鳥について詳しく紹介します。害鳥とされる理由、具体的な被害事例、その生態的特徴、さらに効果的な対策や共存方法について解説します。


害鳥とはどんな鳥なのか?

そもそも「害鳥」とはどのような鳥を指すのでしょうか。一般的に害鳥とは、人間の生活や農業、衛生面などに悪影響を及ぼす鳥類のことを言います。ただし「」という概念は人間側からの視点であり、鳥自身にはそのような意図はありません。鳥たちは生きるために行動しており、害鳥とされる原因は多くの場合、人間との生活圏の重なりが大きな要因となっています!


代表的な日本の害鳥一覧と特徴

ここからは、代表的な害鳥として問題視される鳥たちを解説します。

1. カラス(ハシブトガラス、ハシボソガラス)

特徴ハシブトガラスハシボソガラス
くちばし太くて湾曲細くてまっすぐ
額の形盛り上がっているなだらかで平たい
鳴き声「カァー」と太くて響く「ガァガァ」と濁っている
体の大きさやや大きめ(約56cm)やや小さめ(約50cm)
翼の形先が広がる先が細め
好む環境森林・都市部畑・草原・川沿い

【生態と特徴】

日本には主に「ハシブトガラス」と「ハシボソガラス」の2種がいます。

  • ハシブトガラス全長約55cm、黒色で光沢があり、くちばしが太く上に盛り上がっています。声は「カァーカァー」と澄んでおり、主に都市部に多く、知能が非常に高く、問題解決能力も備えています。人の顔を覚える能力もあり、敵意を持った人に対し集団で威嚇・攻撃することもあります。
  • ハシボソガラス全長約50cm、同じく全体が黒いですが、くちばしは細く額は平坦です。声は「ガーガー」と濁っており、主に農村部や都市郊外に多く、ハシブトガラスよりも警戒心が強いとされています。

【被害の実態】

  • 都市部での被害
    ゴミ収集所を荒らし、ゴミを散乱させる被害は代表的な問題です。さらに、巣を電柱や高圧線設備に作ることによる停電事故が年間に全国で数百件発生しています。都市の公園や住宅地では繁殖期(春~初夏)に威嚇攻撃をする事例が増加しており、小さな子供や高齢者が被害に遭うことも少なくありません。
  • 農村部での被害
    農作物への被害が深刻です。特に収穫前のトウモロコシ、スイカ、柿、リンゴなど果実類や野菜類が集中的に狙われます。また、畜産農家では牛舎や養鶏場に侵入して飼料を食べる被害もあり、畜産コスト増の要因となっています。

【効果的な対策】

  • 都市部での対策
    ゴミ置き場への対策が基本です。蓋付きゴミ箱の設置や防鳥ネットをかける、地域で収集時間を統一し短時間で回収する方法が効果的です。また、カラスは人の顔を覚えるので、むやみに刺激せず、静かに無視する姿勢も重要です。さらに自治体レベルでは、巣の撤去作業を専門業者に依頼することも行われています。
  • 農村部での対策
    防鳥ネットやテープ、反射光テープの設置が効果的で、さらに収穫直前に専用の防鳥袋をかける方法も有効です。近年では、爆音機やレーザー式威嚇装置、さらには訓練した鷹(鷹匠)による追い払いも一部で使われています。また、地域全体で追い払いを協力して行うことで被害を減らする事例もあります。

2. ドバト(カワラバト)

【生態と特徴】

ドバト(カワラバト)は全長約30cm、都市の公園や駅前でよく見る灰色を基調とした鳥です。もともとは飼育されていたハトが野生化した種で、人間との距離が近く、人を怖がらず繁殖力が強い特徴があります。年中繁殖でき、年間5~6回も産卵することができます。

【被害の実態】

  • 糞害
    ドバトの糞は強い酸性で、建築物や銅像などに付着すると腐食・劣化を引き起こします。特に駅舎や橋梁、文化財、マンションのベランダなどで大きな被害が報告されています。景観的にも問題で、清掃費用の増加を引き起こしています
  • 衛生問題
    糞の中にはサルモネラ菌、クリプトコックス症やオウム病の病原体が含まれることがあります。特に公園や駅前広場など人が集まる場所では、小さな子どもや高齢者が感染症リスクに晒されます。

【効果的な対策】

捕獲・移動対策
大量発生している地区では専門業者による捕獲を行っており、特定の場所から移動させる措置を取ることもあります。ただし、他の地域へ移動するだけになるため、広域連携も必要です。、忌避剤散布が有効です。特に駅前や商業施設では、定期的な清掃とネット設置が必要となります。

エサやり禁止の徹底
最も重要なのは、市民への啓発活動を通じ「エサやり禁止」を徹底することです。条例による禁止、違反者への指導・罰則も必要です。

防鳥ネット・忌避剤設置
駅構内や商業施設、マンションなど被害が多い場所には、侵入を防ぐ防鳥ネットを設置します。さらに忌避ジェル剤を窓枠などに塗布することでハトが止まらなくなります。ハトの居場所をなくすことで、集まって来るのをを防げます!


3. ムクドリ

夕暮れ時に集団で飛び回り、大量の糞害をもたらす鳥として知られます。

【生態と特徴】

ムクドリは体の長さが約24cmの中くらいの大きさの鳥です。灰色っぽい色をしていて、ほっぺたに白い模様があります。昼間は郊外の田んぼや畑などで昆虫を食べていますが、夕方になるとたくさんの仲間と一緒に街の木や電線に集まり、そこで寝ます。ときには何千羽もの大きな群れになり飛び回ることもあります!

【被害の実態】

ムクドリは大群で集まる事があるため、特に糞の被害が大きくなります。車や道路、公園、建物の前などが糞で汚れてしまいます。また、夕方に群れで集まったときの鳴き声がとても大きく、騒音となり、住んでいる人にとっては迷惑になることも多いようです!

【効果的な対策】

ムクドリがいつも集まる場所から追い払うことが基本的な対策です。大きな音や強い光を出す機械を使ったり、ムクドリが好む街路樹の枝を切って、止まりにくくしたりすることも効果的です。しかし、一つの場所だけで追い払うと、別の場所に移動するだけなので、近くの町や地域とも協力して、同時に追い払うことが大切です。

4. ヒヨドリ

庭木や果樹を食害し、騒音問題も引き起こす鳥です。

【生態と特徴】

ヒヨドリは体長が約27cmの中型の鳥です。全体的に灰色っぽい色をしていて、頭には少し立った羽(冠羽)があります。1年を通して日本各地にいて、特に冬になると食べ物を求めて人の住む町や庭に多く現れます。主に果物や花の蜜、昆虫などを食べ、ミカンやブドウなどの果実を特に好みます。鳴き声は「ピーヨ、ピーヨ」と大きく高い声で、よく目立ちます。

【被害の実態】

ヒヨドリは果物を食べるため、家庭の庭木や果樹園などで果実を食べてしまう被害が多くあります。イチゴやブドウ、ミカン、サクランボなどが狙われます。また、大きくて甲高い鳴き声を出すため、特に群れで行動しているときは騒音になり、近くに住む人たちのストレスになることがあります。

【効果的な対策】

果樹園や家庭菜園では、ヒヨドリが果実を食べられないように防鳥ネットを張ることが最も効果的です。また、光るテープやCDを吊るして、近づきにくくする方法もあります。庭木や果樹の枝を切り整えて、ヒヨドリが隠れにくくすることも効果があります。音を出す機械を使って追い払う方法もありますが、ヒヨドリは音に慣れやすいため、ときどきやり方を変える工夫が必要です。


5. スズメ

スズメは身近な鳥ですが、農業に深刻な被害を与えることがあります。

【生態と特徴】

スズメは体長が約14cmの小さな鳥で、日本中どこでもよく見られます。体の色は茶色っぽく、頭と背中には濃い茶色の模様があり、頬には黒い斑点があります。普段から群れで行動し、主にお米や小麦などの穀物を好んで食べます。鳴き声は「チュンチュン」と鳴きます、人が住む町や田んぼ、畑などに多く住んでいて、建物の隙間や屋根の下などに巣を作ります。

【被害の実態】

スズメは特に農業に大きな被害を与えることがあります。稲や小麦などの穀物が収穫される直前に、大群でやってきて食べてしまいます。その結果、収穫量が減ってしまい、農家の人たちにとっては大きな問題です。また、家の隙間や屋根裏に巣を作ることで、糞がたまって不衛生になったり、ダニやノミが発生する原因になることもあります。

【効果的な対策】

田んぼや畑では、防鳥ネットを使うことが基本的でとても効果があります。また、光るテープやかかしを使ったり、鳥よけバルーン(大きな目玉模様が描かれた風船)を設置すると、スズメを追い払うことができます。最近ではレーザーを使った機械もあり、一定の効果があります。家に巣を作られないようにするには、屋根や壁の隙間をあらかじめ塞いでおくことが大切です。


専門家からのメッセージ!!

「鳥は本来悪者ではなく、生態系に欠かせない一部です。人間側が工夫と理解を深め、鳥との共存を目指すことが大切」とのこと。各地で被害対策を進めるとともに、自然環境の保全や教育啓発も並行して行う必要があります。

私たちは共生の視点で「害鳥問題」を考え、自然との調和ある社会を目指したいものです。

この記事の作成者
害獣駆除の専門家 ケーシーさん

害獣駆除センター
害獣駆除の専門家
元田 ケーシー


害獣駆除センターの害獣駆除の研究員です。害獣の生態や効果的な忌避方法を研究しています。記事で執筆している内容は、自社で試験調査した内容や、国内と海外の学術論文を基に情報提供しています。

地域別駆除実績

関西エリア

関東エリア

東海エリア