モグラ退治をしてはいけない理由とは?専門家に聞く正しい対策

畑や庭で見つかるモグラ塚や掘り返された土壌。これらを見て「モグラが作物を荒らしているのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、モグラ退治は法律で制限されており、誤った対策をとると逆に被害が悪化する場合もあります。本記事では、モグラの生態や被害の特徴、退治を避ける理由、正しい対策方法について、専門家の知見を基に詳しく解説します。


モグラの基礎知識:生態と種類

モグラの特徴

モグラは土中で生活する哺乳類で、視力がほとんど退化している一方、嗅覚と聴覚が非常に発達しています。その独特の生活スタイルと生態が、畑や庭での問題の原因となる場合があります。

主な特徴

  • :尖った形状でピンク色をしている。
  • 前足:地面を掘るために外側に向けて発達し、大きな爪がある。
  • :全身が細かい毛で覆われており、どの方向にも動きやすいよう垂直に生えている。
  • :短い棒状。
  • 生息環境:農地、公園、森林など幅広く分布。

日本に生息するモグラの種類

日本では以下のようなモグラが生息しています。

種類生息地特徴
アズマモグラ本州中部以北短い尾を持つ日本固有種
コウベモグラ西日本・対馬など大型種でアジア大陸にも分布
サドモグラ佐渡島・越後平野準絶滅危惧種
ミズラモグラ本州の森林地帯高山帯に生息する小型種
ヒミズ日本全土半地下性で植物の根も食べる雑食性

モグラが引き起こす被害の特徴と見分け方

モグラによる被害は、直接的なものと間接的なものに分けられます。

直接的な被害

  1. 作物への影響
    • トンネルを掘る際に植物の根を傷つける。
    • 水田の水が抜ける。
    • 根周辺の土壌環境が乱れ、植物が枯れる。
  2. 景観の損傷
    • 地表の盛り上がり(モグラ塚)が目立つ。

間接的な被害

  • トンネル利用による二次被害
    • ネズミがトンネルを利用して作物を荒らす。
    • 地中の昆虫を捕食し、土壌の肥沃度が低下する。

モグラとネズミの違い

モグラは植物を直接食べないため、植物の根をかじられた場合はネズミが原因である可能性が高いです。モグラとネズミの主な違いは以下の通りです。

特徴モグラネズミ
食性肉食(昆虫中心)雑食(植物含む)
毛の向き垂直に生えている頭から尻に向けて
見た目耳や目が小さい耳と目が大きい

モグラの被害の見分け方(他の動物との違い)

動物被害の特徴
モグラモグラ塚(小さな土の山)、地下トンネルの隆起、植物の根の影響
ネズミ(ハタネズミなど)小さな穴(直径5cm前後)、穴の周りに土が少ない、植物の茎や葉をかじる
アナグマ大きめの穴(直径10cm以上)、穴の周りに大量の土がある
ミミズや昆虫の影響小さな土の粒が表面に出るが、トンネルや塚はない

モグラ退治をしてはいけない理由

法的な理由

日本では「鳥獣保護管理法」により、野生動物の捕獲が原則禁止されています。モグラを無許可で捕まえることは違法行為となり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。

生態系への影響

モグラは害虫を捕食し、土壌を通気性の良い状態にする役割も担っています。モグラを排除しすぎると、以下のような生態系のバランスが崩れる恐れがあります。

  • 害虫(ヨトウムシ、ネキリムシ)の増加。
  • 土壌の栄養循環が滞る。

  • グラのトンネル内に空気が入り込み、居心地の悪い状態を作り出します。
  • トンネル自体を掘り返す
    地面に残されたモグラの通路を見つけたら、スコップや鍬を使って掘り返します。これにより、モグラがそのトンネルを再利用する可能性を減らします。

  • 木酢液を散布
    木酢液は自然由来の液体で、独特の強い匂いがあります。この木酢液をトンネルの出入口やモグラ塚の周囲に散布すると、モグラが近寄らなくなる可能性があります。
  • 炭や唐辛子を使用
    燃焼した炭の粉や、唐辛子を含んだ忌避剤も効果的です。これらをモグラの活動エリアに撒いておくと、モグラがそのエリアを避ける傾向があります。

3. 物理的な障壁を設置する

モグラが侵入できないように、物理的な障壁を作る方法も非常に有効です。庭や畑の周囲に一定の対策を施すことで、モグラが根本的に入ってこれない環境を作ることができます。

  • アゼ波シートを埋める
    アゼ波シートとは、波状の形をしたプラスチック製のシートで、地中に埋めて使用します。畑や庭の周囲に30~50cmほど埋め込むことで、モグラがシートを超えて侵入するのを防ぎます。
  • ワイヤーネットの活用
    ワイヤーネットや細かな金網を地表の下に敷き詰めることで、モグラがトンネルを掘ることを防ぐことも可能です。特に花壇や野菜畑には効果的です。

4. 音波や振動を利用する

モグラは聴覚が非常に鋭敏で、わずかな音や振動にも敏感に反応します。この特性を利用してモグラを追い払う方法があります。

  • 音波振動装置の設置
    市販されている音波振動装置は、地中に音波や振動を発生させることでモグラに不快感を与えます。これをモグラ塚の近くに設置することで、モグラがそのエリアを避けるようになります。
  • 風車やペットボトルを利用
    DIYでできる方法として、庭や畑に風車を設置するか、ペットボトルを棒に取り付けて風の力で振動を生じさせることも有効です。この振動が地中に伝わり、モグラが住み着きにくい環境を作ります。

注意点と総括

モグラ対策は、1つの方法だけで完全に解決することが難しい場合があります。そのため、複数の方法を組み合わせて実施することが重要です。また、モグラは法律で保護されている地域もあるため、駆除を行う際は事前に確認が必要です。

これらの対策を実施することで、モグラが活動しにくい環境を作り、庭や農地を守ることが可能になります。


モグラ対策に役立つ具体的なアイテム

嗅覚を刺激するもの

  • 木酢液(もくさくえき)の使用方法とモグラへの効果
  • 木酢液は木を炭にする際に発生する蒸気を冷やして液体化したもので、独特の焦げ臭い匂いが特徴です。この香りがモグラの嗅覚を刺激し、不快に感じさせることでモグラを遠ざける効果があります。
  • 使用方法
  • 希釈:原液のままだと匂いが強すぎるため、2倍(1:1の割合)に薄めて使用します。

音波振動装置

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その他

  • コーヒーカスや火で炙った稲わらも効果的。

昔ながらの知恵を活かしたモグラ対策

モグラ対策には、現代的な技術や製品だけでなく、昔ながらの知恵も非常に有効です。特に、江戸時代から伝わる植物を利用した方法は、自然に優しく安全にモグラを遠ざける手段として注目されています。ここでは、彼岸花を活用したモグラ対策を詳しく解説します。


1. 彼岸花の利用

彼岸花は、美しい花を咲かせる植物として知られていますが、実はその球根にはモグラを遠ざける効果があると言われています。球根に含まれる成分がモグラの嗅覚を刺激し、忌避効果を発揮します。

  • 球根を畑や庭に植える
    モグラが出没するエリアの周囲やトンネルの近くに彼岸花の球根を植えると、その成分が徐々に土中に広がり、モグラが近寄らなくなる効果が期待できます。特に畑や花壇の境界に植えることで、侵入防止にも役立ちます。
  • 畝全体に効果を広げる
    彼岸花の球根を水に溶かし、その液を畝やモグラ塚に撒くことで、広範囲にわたる忌避効果を得ることが可能です。この方法は、短期間で効果を実感したい場合に適しています。

2. 彼岸花水の活用

彼岸花水は、江戸時代から伝わる自然由来のモグラ対策として有名です。この方法は簡単に実施できるうえ、効果も高いと言われています。

  • 彼岸花水の作り方
    彼岸花の球根を細かく砕き、水に浸けてしばらく置くことで、忌避成分を含んだ彼岸花水が完成します。この液体は直接地面に撒いたり、トンネルに注入して使用します。
  • トンネルへの注入
    モグラの通路を見つけたら、そこに彼岸花水を注ぎ込みます。モグラが嫌がる成分がトンネル内に広がり、そのエリアから離れていく効果が期待できます。この方法は、特定の場所にモグラが集中している場合に特に有効です。

昔ながらの知恵を活かす利点

  1. 自然に優しい
    彼岸花を利用した方法は、化学薬品を使わないため、環境に優しく、作物や庭への悪影響もありません。
  2. 手軽でコストが低い
    彼岸花の球根は比較的手に入りやすく、費用も抑えられます。また、道具もほとんど必要ないため、簡単に試すことができます。
  3. 伝統的な知恵を受け継ぐ
    江戸時代から伝わる知恵を現代に活用することで、自然と共生しながら害獣対策を行う精神を受け継ぐことができます。

注意点

  • 球根の毒性に注意
    彼岸花の球根には有毒な成分が含まれているため、取り扱う際は手袋を着用し、誤飲や皮膚への付着に注意してください。
  • 効果の持続性
    彼岸花水の効果は時間の経過とともに薄れるため、定期的に撒き直すことが必要です。また、雨が降った場合は効果が薄れるため、その後に再び撒くと良いでしょう。

モグラとの共存:自然の視点から考える

モグラは、庭や畑に害を与える存在として捉えられることが多いですが、一方で自然界において重要な役割を果たしている益獣でもあります。自然農法を実践する中で、モグラを単なる害獣として排除するのではなく、自然の一部として受け入れる視点が求められています。ここでは、モグラとの共存の意義や実践的な考え方について詳しく解説します。


1. モグラは益獣としての役割を持つ

モグラは害虫を捕食することで、土壌の生態系を守る役割を果たしています。その行動を理解することで、単なる害獣ではなく、自然界の一員としての重要性に気づくことができます。

  • 害虫を駆除する天敵としての存在
    モグラは主に地中に生息し、ミミズだけでなく、コガネムシの幼虫やハネカクシなどの害虫も捕食します。これにより、作物に被害を与える害虫の繁殖を抑える効果があります。
  • 土壌改良に貢献
    モグラが掘り進めるトンネルは、土壌の通気性を高め、雨水の浸透を促進します。結果として、土壌が柔らかくなり、根の成長を助ける環境を整える手助けをします。

2. 自然農法家の視点:モグラとの共存

自然農法家である高内実さんは、モグラを害獣として排除するだけではなく、畑や庭との共存を考えることの重要性を提案しています。

  • 畝を守ることに集中する
    高内さんは、モグラの行動を理解した上で、被害を受けやすい畝や作物の根元を重点的に守ることを推奨しています。例えば、畝にアゼ波シートを埋めたり、彼岸花の球根を植えるなど、特定のエリアに防御策を集中させることで、全体を守る負担を軽減することができます。
  • モグラの存在を許容する
    モグラが生息することで生態系がバランスを保つことを考慮し、ある程度の被害を受け入れる寛容さも必要です。特に、作物がモグラの影響を受けにくい場合や害虫が多いエリアでは、モグラの存在をそのまま許容することで、農作業全体の効率が向上する可能性があります。

3. モグラとの共存を目指した具体策

モグラを完全に駆除するのではなく、共存を図るためには、環境や状況に応じた工夫が必要です。

  • 被害を局所化する工夫
    畝の周囲に物理的な障壁を設けることで、モグラの活動を特定のエリアに限定します。これにより、重要な作物への被害を抑えつつ、モグラを排除せずに済む方法が実現できます。
  • 多様な生物の生息を促進
    モグラだけでなく、害虫や益虫を含む多様な生物が共存する環境を整えることが重要です。例えば、土壌を豊かにすることで、自然な生態系のバランスが保たれます。

共存の利点と意義

持続可能な農業の実現
モグラが果たす役割を理解し、許容する姿勢を持つことで、長期的に見て持続可能な農業が可能となります。

生態系の維持
モグラを含む生物の多様性を尊重することで、自然界のバランスを保つことができます。

環境に優しい農法
モグラを過剰に駆除せず、共存を図ることで、化学薬品の使用を減らすことができます。


まとめ:モグラと上手につきあう方法

モグラの被害を最小限に抑えるには、生態を理解し、適切な対策を講じることが重要です。退治ではなく追い払うことを基本とし、自然との共存を意識して畑や庭を守りましょう。

この記事の作成者
害獣駆除の専門家 ケーシーさん

害獣駆除センター
害獣駆除の専門家
元田 ケーシー


害獣駆除センターの害獣駆除の研究員です。害獣の生態や効果的な忌避方法を研究しています。記事で執筆している内容は、自社で試験調査した内容や、国内と海外の学術論文を基に情報提供しています。

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