ヌートリアは畑を荒らす!特徴や被害を徹底解説します!!



全国に発生する害獣「ヌートリア」

ヌートリアという名前を聞いたことがありますか?

一見するとモルモットやカピバラのような可愛らしい外見を持つこの動物ですが、実は農業や水辺の環境に深刻な被害を与える「害獣」として知られています。

ヌートリアは、もともと毛皮の使用を目的として日本に輸入された外来生物です。
しかし、養殖場から逃げ出した個体が野生化してしまい、日本の各地で繁殖するようになりました。

現在では主に西日本を中心に全国に広がり、河川や池の周辺でその姿を確認できます。

本記事では、ヌートリアの生態や被害の実態、さらに対策方法について詳しく解説します
この記事を読んで、ヌートリアに関する知識を深めましょう


ヌートリアについて解説します!!


ヌートリア(学名:Myocastor coypus)は、南アメリカ原産の大型齧歯類(げっしるい)です。

まるで、モルモットやカピバラのような見た目をしており、茶色い体毛に覆われています

胴体の長さは40〜60cm程度、尻尾は30〜40cmと非常に長く毛が生えていないのが特徴です。
成獣の体長は70〜100cmと非常に大きい体をしています

他にも特徴的な点があり、齧歯類特有の大きな歯はオレンジ色で口周りは白っぽい毛に覆われています。


ヌートリアの生活


ヌートリアは河川や湖、池の近くの土手や畑の畔(あぜ)などにつくった巣穴で生活しています

水がある場所から離れて活動することはほとんどありません
基本的に巣穴の数百メートルが行動圏となっていますが、河川近くに巣がある個体の場合1kmほどの行動圏を持つこともあります。

夜行性であるため、夕方から明け方に活動することが多いですが、昼間に活動していることもあります。

また、寒さに弱いため、夏に活発になり冬場は活動が消極的になります。
しかし、冬は植物が枯れてしまうため畑の被害は冬が多いという傾向があるため冬場だからといって油断は禁物です。


ヌートリアは何食べるの?


ヌートリアは主に水辺の近くに生えている植物や川や用水路近くの畑の作物を食べます
他にも水生植物や貝を食べることもあります

巣穴の周辺の植物を食害するため、巣穴の近くの植物が食い荒らされて禿げて土壌が見えてしまっていることもあります。

稲の苗や野菜が好物で、特に稲は狙われやすい傾向があります。
野菜はにんじん、大根などの土中で育てるものから、白菜やキャベツなどの葉物、大豆やスイカなどなんでも食べてしまいます。


泳ぎが上手なヌートリア!!


ヌートリアは水中の植物や貝なども食べる草食動物であり、水中を潜って餌を取ってくることもあります
そのため水辺に好んで生息しており、主に河川、湖、池、用水路などの近くで多く見かけます。

その見た目じゃ泳げないでしょ…..
そう思うかもしれませんが、実はその見た目に反して非常に泳ぎが得意なのです。

ヌートリアの後ろ足は水かきになっているため、自由自在に泳ぐことができます。なんと陸よりも水中の方が素早く動くことができるのです

普段は水面をゆらゆらと泳いでいますが、餌を取る時は水中に潜って植物や貝を食べる姿がよく目撃されています。


驚異的な繁殖力を持つヌートリア


ヌートリアの最大の特徴の一つは、その驚異的な繁殖力です

ヌートリアは1年に2〜3回出産することができ、一度に5〜8匹の子どもを産みます。
さらに生後半年で出産可能になるため、個体数はねずみ算のように増えていき、最初は1匹しかいなくても1年後には60匹以上に増加してしまいます。


ヌートリアによる被害

主に自然や農業に多大な被害を与えるヌートリア。

ヌートリアによる具体的な被害は以下の3つです。

  • 農業に悪影響を与えてしまう
  • 堤防や用水路の破壊
  • 生態系への影響

農業に悪影響を与えてしまう

ヌートリアは農業をしている人々にとって非常に厄介な害獣です。

稲や野菜などの農作物を食べてしまうので、近くに川や用水路がある畑や農場を持っている方は特に注意しましょう

被害を受けると収穫量を大幅に減少してしまうだけでなく、根まで食べられてしまい腐って生育不能になってしまうことがあります。

特に巣穴の近くの植物が枯れてしまう冬場は被害を受けることがあるので注意しましょう。


堤防や用水路の破壊


ヌートリアは巣穴を掘ってそこで生活をする習性があります
巣の直径20〜30cmの横穴で、巣穴は先が枝分かれしているトンネル状をしており、入り口から奥までが2〜7mという長さをしています。

この長く複雑な巣穴は土手や畔(あぜ)などにつくられます。
この習性が原因で、堤防や用水路、畔が破損してしまいます。この破損によって洪水のリスクも高まってしまいます。


生態系への影響


ヌートリアは水生植物や貝も大量に食べるため、希少な水生植物や貴重な貝類を食害してしまっていることが報告されています

絶滅危惧種の水生植物がヌートリアによって減少してしまったという事例の報告もあります。

こういった在来種の生態系を破壊してしまう可能性が高いことから、外来種の中でも、生態系に特に被害を与える危険性があるとされる「特定外来生物」に指定されています。


特定外来生物とは??

特定外来生物とは、日本に本来生息していない外来種の中で、国内に定着すると生態系バランスを乱し、在来種の減少や絶滅につながることがある外来生物を指します。
法律に基づいて規制されており、輸入や飼育、移動が厳しく規制されています。ヌートリアの他にアメリカザリガニやウシガエルが、セアカゴケグモなどが挙げられます。

その法律は特定外来生物について記された、「外来生物法」です。正式には「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」といいます。

これは国内の生態系、人間の健康に与える重大な被害を防止することが目的とされています。

また、個人が駆除・捕獲するのは基本的に禁止されており、自治体に申請し許可を得るか、自治体に駆除・捕獲してもらう必要があります。

外来生物法についてはこちら(環境省HP)を参照してください。


ヌートリアを見つけたらどうすればいいの??

近年、市街地でも目撃されることが増えたヌートリア。
特に京都の鴨川で多く目撃されており市街地に現れる事例が増えています。

もし見つけたらどうすればいいのでしょうか。

【3つの注意すべき点】

  • 絶対に近づかない
  • 自分で捕獲しようとしない
  • 見つけたら役所に電話する

絶対に近づかない

見つけても絶対に近づかないようにしましょう

もし近づいたり、自分で捕獲しようとするとヌートリアに噛まれてしまう危険性があります。
怪我をしてしまう恐れがあるのに加えて、レプトスピラ症などの伝染病を媒介する可能性があるので絶対やめましょう。


役所に電話しよう

ヌートリアを個人で捕獲しようとするのは非常に危険です。
その上「特定外来生物」に指定されているため、捕獲する場合多くの自治体で法令手続きが必要になるため、見つけたらお住まいの役所に連絡をするようにしましょう

市街地などで見つけた場合でも他の人が被害にあったり、繁殖して被害が拡大していってしまいますので、役所に連絡するようにしましょう。


や農場を守ろう!!

ヌートリアは作物を食い荒らし、農業をしている人に大きな被害を与える恐れがあります。

もし畑や農場近くでヌートリアを見つけたり、被害にあったりした場合どのようにして畑や農場を守ればいいのでしょうか。

岐阜県岐阜市のヌートリア対策の取り組みをもとに解説します。


侵入防止の柵を設置しよう

岐阜市の取り組みでは支柱にネットや金網を取り付けた柵と破られた時に侵入を防ぐ波板を組み合わせた侵入防止策を設置しています

これは侵入を防ぐ策としては一番効果的だと言えます。

地面とネットの間に隙間があったり、ネットの目が大きかったり、緩んでいたりすると効果が低下してしまう恐れがありますので注意しましょう。

また、柵が低すぎると飛び越えられてしまう恐れがあるので、90cm以上にすると安心です。


箱罠を設置しよう

先ほどの侵入防止柵の外側に箱罠を設置してき、捕獲効率が高める工夫を行なっています。

箱罠とはその名の通り箱型の捕獲用のトラップです。中に餌を置いて設置しておくことで、餌に引き寄せられた害獣を捕獲することができます

柵の外側以外にも、けもの道付近や巣穴の付近、糞があった周辺に仕掛けることで効率的に捕獲することができます。

箱罠は全国の市区町村からの貸し出しを行なっています。
農業を行なっている方は申請すれば借りることができますので、被害にお困りの方は申請して設置して、畑や農場をヌートリアから守りましょう


ヌートリアが近くにいる目印

ヌートリアが近くにいるかどうか識別する4つのポイントを紹介します。

  • ヌートリアの糞
  • ヌートリアの足跡
  • ヌートリアの巣穴
  • 川の周りのけもの道

ヌートリアの巣穴

ヌートリアは河川の土手や畑の畔(あぜ)に巣穴をつくります

巣の直径20〜30cmの横穴で、巣の周りの草はヌートリアが食べてしまっていることが多いため、巣穴の周りは草が禿げており、見つけるのは難しくありません。

▲河川の土手
▲畑の畔

巣の周りの獣道

ヌートリアの巣穴の周辺は、生い茂った草の中にけもの道が確認されることが多いです

生い茂った草に獣道があった場合、そこを通り道にしている可能性があるので注意しましょう。


糞と足跡があったら近くにいるかも??


ヌートリアの糞

糞は濃い緑色〜黒色をしており、大きさは3〜5cmほどで、形はソーセージのような丸くて細長い見た目をしています

巣の周辺やけもの道の周辺でよく見られます。


ヌートリアの足跡

ヌートリアの後ろ足は水かきがついているため少し特殊な足跡をしています。

山や畑の湿った土の上だと足跡が観察できます
アスファルトの上でも足跡と長い尾を引きずった後を確認することができます。

足の大きさは前足が6cmで後ろ足は12cm、歩幅は20〜25cm程度です。


ヌートリアに関する法規制

法律に基づいた捕獲・駆除

日本ではヌートリアは「特定外来生物」に指定されています。
このため、捕獲する際は自治体に申請し、許可を得る必要があります

見つけた場合は早急にお住まいの役所に連絡をして、捕獲のお願いをしましょう。


自治体の取り組み

多くの自治体ではヌートリア駆除・捕獲の取り組みを行っています。

申請をすれば箱罠という捕獲器の貸し出しや駆除活動の支援を受けることができますので困った時は自治体に連絡・申請をしましょう



FAQ(よくある質問)

Q1: ヌートリアはペットとして飼えますか?
A: 日本では特定外来生物に指定されているため、飼育は法律で禁止されています。


Q2: 自分でヌートリアを捕獲してもいいの?
A: ヌートリアは特定外来生物に指定されているため、個人が無許可で捕獲することは法律で禁止されています。違反した場合、罰金や懲役が科せられることもあります。


Q3: ヌートリアを見かけたらどうすれば良いですか?
A: まずはその場を離れ、早急に自治体に連絡し、捕獲を依頼してください。


Q4: 駆除費用はどれくらいかかりますか?
A: 自身での捕獲は原則禁止されており、自治体にお願いすることが規則付けられています。そのため、自治体にもよりますが、費用はかからないことが多いです。詳しくはお住まいの役所のHPを確認するか、電話にて確認しましょう。



まとめ

ヌートリアは外来生物であり、近年その個体数を増やしています。
そのため市街地でも見られることが増え、被害は増加傾向にあります。

その見た目はブサカワで可愛らしいですが、特定外来生物に指定されており、放っておくとその繁殖力と生態から、私たちの食生活や豊かな自然に大きな影響を与える害獣です。

本記事では、ヌートリアの特徴や生態、被害、対策方法について詳しく解説しました
被害を防ぐためには自治体のサポートを受けつつ、適切な対策を講じることが重要になります


この記事の作成者
害獣駆除の専門家 ケーシーさん

害獣駆除センター
害獣駆除の専門家
元田 ケーシー


害獣駆除センターの害獣駆除の研究員です。害獣の生態や効果的な忌避方法を研究しています。記事で執筆している内容は、自社で試験調査した内容や、国内と海外の学術論文を基に情報提供しています。

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